先進医療とは、厚生労働大臣が認める高度な医療技術で、その技術を用いた治療やその他療養のうち、公的医療保険が適用されないが、一般の保険診療との認めることとしたものです。医療技術ごとに適応症(対象となる疾患・症状等)および実施する医療機関が限定されています。
2024年4月より浜松でも先進医療の助成が始まる事になりました。クリニックによって実施している内容が異なりますのでここに静岡県内の不妊クリニックの一覧にしてみました。
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以下の項目が先進医療の対象となります。(令和6年5月1日現在)
参考:先進医療を実施している医療機関
① 子宮内膜刺激術(SEET 法)
② タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
③ 子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)
④ ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)
⑤ 子宮内膜受容能検査(1-ERA,2-ERPeak)
⑥ 子宮内細菌叢検査(EMMA,ALICE)
⑦ 強拡大顕微鏡による形態学的精子選択術(IMSI)
⑧ 二段階胚移植術
⑨ 子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)
⑩ 膜構造を用いた生理学的精子選択術(マイクロ流体技術を用いた精子選別)
⑪ タクロリムス投与療法
⑫ 着床前胚異数性検査(PGT-A)
※①~⑩が先進医療A、⑪・⑫先進医療B
アクトタワークリニック
① ② ③ ④ ⑤-1 ⑤ー2 ⑥ ⑦ ⑧ ⑨
西村ウイメンズクリニック
② ⑩
聖隷浜松病院
① ⑤-1 ⑥ ⑨
浜松医科大学病院
先進医療なし
西垣エーアールティークリニック
①②③⑤-2⑨
俵IVFクリニック
①②④⑤-1⑥⑦⑧⑨⑩
菊池レディースクリニック
①②③④⑧⑨
県立美術館前IVFクリニック
①③④
静岡レディースクリニック
先進医療なし
岩端医院
①②③④⑤-1⑥⑨
いながきレディースクリニック
①②③④⑤-1⑥⑨
参考:先進医療の各技術概要
① 子宮内膜刺激術(SEET 法)
胚移植の数日前に胚培養液を子宮内に注入することにより、子宮内膜に刺激を与え受精卵の着床に適した環境を作り出し、着床の促進を期待する方法。胚移植の着床不全が見られる場合に行う。
※胚培養液:受精卵を培養した際に得られた培養液(胚由来の因子や着床継続を促す情報伝達物質が含まれる)
② タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養
タイムラプスというシステムを使って、培養中の受精卵を一定時間ごとに撮影する技術。発育過程を画像で記録・観察ができるため、胚の分割や成長速度の異常なども見つけやすく、より良好な胚を選択し子宮に戻せる。
※従来の培養法では観察するのに庫外に出す必要があったが、内蔵カメラの使用で胚を庫外に出すことなく観察できるため大事な受精卵への外的ダメージを大幅に軽減させるこが可能となった。
③ 子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)
胚移植前に子宮内膜に小さな傷をつける方法です。この傷の修復過程で成長因子やサイトカインが分泌され、子宮内膜の着床に対する反応が促進し着床環境が改善されるため妊娠率が高まるとされています。この手法は、体外受精での胚移植の成功率を高めるために行われます。
④ ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)
DNA損傷を起こしていない成熟した精子の頭部がヒアルロン酸に結合しやすいという性質を利用して、見た目だけでは判別できない良好な精子を選別し顕微授精を行う。
⑤ 子宮内膜受容能検査(1-ERA,2-ERPeak)
受精卵が着床するには子宮内膜が胚を受け入れる状態となる最適なタイミングがありこのタイミングの事を「着床の窓」と言います。
このタイミングが合っているかどうかを調べる検査です。
・ERA®
Igenomix社というスペインの企業が実施してる検査。NGSという手法でRNAの発現を検出。
・ERPeak℠
ERA®の後から登場した最新の検査です。RT-qPCRという方法でRNAの発現を検出。
どちらも「着床の窓」を調べる検査ですが、共に賛否あり主治医と相談し選択すると良いでしょう。
ERA®はEMMAとALICEと同じIgenomix社ですので、3つセットのEndomeTRIO検査として勧められる場合があります。
⑥ 子宮内細菌叢検査(EMMA,ALICE)
EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)
子宮内の菌を調べるだけでなく、細菌叢のバランスを評価する検査。
ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)
子宮内膜炎の原因菌の有無を調べる検査。
ALICE検査では、慢性子宮内膜炎に関連する主な細菌10種類をリストアップし、その細菌があるかどうかということのみを見ているのに対して、EMMA検査では、子宮内の細菌を網羅的に調べています。 その結果、EMMA検査では、善玉菌や悪玉菌、その他良いとも悪いとも言えない菌(日和見菌)など様々な菌が検出されます。引用:アイジェノミクスジャパン
⑦ 強拡大顕微鏡による形態学的精子選択術(IMSI)
この方法は、精子を6000倍に拡大して観察し、形態が良好な精子だけを選び出す方法です。従来の400倍の顕微鏡では見逃されることのある精子の微細な異常(空胞など)も、IMSIなら発見できる場合があります。これにより、異常構造体を持つ精子を使用することで起こる着床不成功や流産のリスクを減らすことが可能です。
⑧ 二段階胚移植術
体外受精で得られた胚(受精卵)を、2~3日目の初期胚と5~6日目の胚盤胞に分けて、同一月経周期内で時期をずらして子宮内に移植する方法です。初期胚を先に移植することで子宮内膜の着床環境を整え、その後妊娠確率の高い胚盤胞を移植することで、着床率・妊娠率が向上するメリットがあります。
⑨ 子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査)
子宮内フローラ検査は、慢性子宮内膜炎の原因となる細菌叢を調べる検査です。
一方、EMMA検査は子宮内膜の細菌の種類と量を測定し、バランスが正常かどうかを調べる検査です。
⑩ 膜構造を用いた生理学的精子選択術(マイクロ流体技術を用いた精子選別)
これまで精液中の精子は遠心分離機を用いて選別してきましたが、精子が物理的に損傷されたり、運動率が低下したりするケースが見られました。この方法では特殊な膜構造をもつ装置を使って、精液から運動能の高い機能的な精子を選別する技術で良好な精子を分けることができます。
⑪ タクロリムス投与療法
母体の免疫異常が原因で不妊症に悩む患者さんに対する治療法です。この方法では、免疫抑制薬であるタクロリムスを使用して、母体の免疫応答を正常化します。通常、妊娠中は母体が胎児を異物と認識せずに受け入れる免疫寛容が働きますが、これが不十分な場合、不妊の原因となることがあります。タクロリムスは、免疫の過剰反応を抑え、妊娠の成功と継続を助けることが期待されています。
⑫ 着床前胚異数性検査(PGT-A)
体外受精や顕微授精により出来上がった受精卵(胚)の細胞の一部を採取(生検)し、胚を子宮に移植する前にその細胞の染色体や遺伝子の異常の有無を調べる検査です。
※令和6年5月1日現在では、大阪の一部の施設のみで先進医療の対象となってます。
※この先進医療は、ご自分の加入されている民間の医療保険の、先進医療特約に加入されている場合も保証されますのでご確認下さい。